▼ Notes 2000.9

9/25 【奇人たちの晩餐会】
■フランス産のコメディ映画「奇人たちの晩餐会」をビデオ鑑賞。舞台劇風のシチュエーション・コメディの佳作で、なかなか愉しめた。変わり者を招いて嘲笑う嫌味な「馬鹿の晩餐会」の見世物にしようと、とびきり間抜けそうな男を連れてきたところが、間抜けなゆえにその善意(らしい)の親切がことごとく裏目に出る迷惑ぶりで……という皮肉な「大きなお世話」状況。どこか素直に笑えないような意地の悪さがフランス流か。もとは舞台の脚本だっただけあって、展開はほとんど室内劇に終始。くせのある会話の妙や、登場人物を入れ替わりたち替わりさせる手法で飽きさせない。電話の使いかたも随所でアクセントになっていて巧いところ。(とりわけ「寝取られ旦那」をめぐる意外な展開は笑える。笑う者/笑われる者が二重にひっくりかえる逆転劇)
■まあただ、もうちょい奥行きがあれば良かったかな。改めて米国で映画化しなおすそうだけれど、そう大騒ぎするほどのものでもない気がする。できれば映画館で共時性を味わいながら観たかったなと、ちょっと思った。(★★★)


9/23 【マルコヴィッチの穴】
■たまには封切り日の映画に行ってみるか、ということで「マルコヴィッチの穴」をさっそく観る。が、期待したほどではなかった。シュールな味のブラック・コメディなんだろうかと思っていたら、「71/2階」をめぐる前半の奇妙でゆがんだ不条理コメディの風味はだんだん薄れて、終盤はほとんどブラックなだけになっていく。後味はえらくどんより。筋書きは脈絡なくどんどん思わぬ方向へ展開していって、いったいどういう話になってしまうのか見当がつかないのだけど、なんだかいかにも忙しくて消化不良に終わっているような皮肉も少なくないし、奇想SFとしては設定がいささか説明不足。
■キャメロン・ディアス(あの声はなんか個性的で好き)が出ているせいもあってか、結構広く上映されている映画みたいなのだけど、これはちょっときついんではないか。とりあえずかなり好みの分かれそうな作品。(★★★)


9/20 【星の数】
■あるいは不審に思われたかたもいるかもしれないけれど、最近、目録を作成するついでに、Book Review のこれまでの採点(要するに★の数)をちょこちょこいじくっていました。総じて多少ながら基準を緩めています。まあ、こういうのはあまり褒められた行為じゃないわけですけれども。各作品の個人的評価にことさら異同が生じたというわけではなくて、あまり気難しい路線にしていると、例えばかなり好意的に受けとめた作品にも★★★をつけなくてはいけなかったりして、それは世間的なアピールとしていかがなもんだろうか、と思えてきたしだい。
■しかし結局、こんなことをしつこく気にするのは製作者だけなのかもしれないな。
■ちなみに現時点で★★★★★(ほぼ全面的に支持)としているものを挙げておくと、

『魍魎の匣』 京極夏彦
『ポップ1280』 ジム・トンプスン
『死んだふり』 ダン・ゴードン
『キャッチ=22』 ジョーゼフ・ヘラー
『まるで天使のような』 マーガレット・ミラー

の5作品ということになります。まあこんなもんかな。『死んだふり』はいささか過大評価な気もしてくるけれど、うさんくさい一人称小説が好みなので。
■先週あたりから読書の素に登録してもらっています。読書系サイトの更新情報を拾っているところ。どうも手動でやってるみたい……


9/16 【Google/五輪サッカー】
■新検索エンジンGoogle(日本語版)は、たしかになかなか良さそうですね。速くて、画面もシンプルだし。
■五輪サッカーはちょびちょび観てます。これまでの感想は、

・服部がいないのは惜しまれるね。
・スロヴァキアはなかなか手強いと思う。ブラジル相手に中盤のプレスで堂々と勝負していたし、ドリブルで相手を軽々と抜き去っていた選手も何人かいた。
・スペインは強すぎ。シャヴィの段違いの支配力は韓国を余裕で蹴散らしていた。中田英寿とやりあったらどんなもんなんだろうか。

■あと、南アフリカ戦の困った実況(というか、なぜBSまで足なみ揃えてるのよ)に関しては、352で紹介されている「K敷」氏の毒舌が笑える。


9/15 【クッキー・フォーチュン】
■ロバート・アルトマン監督「クッキー・フォーチュン」をビデオ鑑賞。復活祭をひかえた米国南部ののどかな田舎町を舞台に、老婦人の死をめぐって起きるひと騒動を群像劇風の手法で描く。映像のなかの時間はあくまでもゆったりと流れ、犯罪劇めいた筋書きながら一瞬たりともサスペンスにはならない。そういうアンチ・ハリウッド的な悠然とした世界観を描きたいんだろう。レジナルド・ヒルの『完璧な絵画』をちょっとだけ思い出した。
■「心優しく包容力のある黒人」「欲深な聖書ばばあ」「奔放なはねっかえり娘」と、おそろしいほど定型的な人物描写をあとで多少ひっくりかえすのかと思ったら、最後までそのまま通してしまった。意味ありげに映される酒場の言葉のとおり、この町ではいつも「何事も起こらない」ということか。その路線から少し外れて印象的なのが、ジュリアン・ムーア演じる「とろい妹」で、この人の扱いはなかなか皮肉。ただ最後の展開をやたらばたばたさせたのは、わざとなんだろうけどいまいち意図がわかりませんでした。
■良くも悪くも、アルトマン監督の老練なわざを堪能したい「映画好き」のための映画というかんじ。(★★★)


9/14 【続・ボストン弁護士ファイル】
先日とりあげた米国の弁護士ドラマ「ザ・プラクティス」、FOXの今週放送分は、上田さんが4/19付の日記で紹介されている黒人問題を扱った回でした。たしかに考えさせられて、なかなか感動的。例によって、判決が出てもまったく事件が解決した気にならないのがすばらしい。ちなみにたしかこの二週前だったかの、いきなり刺殺死体を映す場面からはじまるエピソードもかなりの秀作でした。


9/11 【ルナティック・ラブ】
先日話題にした『セメント・ガーデン』の映画版、「ルナティック・ラブ〜禁断の姉弟〜」を観た。ちなみに近所のビデオレンタル屋では、「エロティック・ドラマ」なるコーナーに分類されていました。もちろん平然と借りてきたけど。
■なかなか原作に忠実な映画化で、というよりほんとにそのまんま。純真な少年少女にこんな役をやらせてしまっていいんだろうか。主役の少年は原作のイメージよりちょっと年長で、意外と美形かな。お姉さん役のシャルロット・ゲンズブールはすごく整った顔だちではないと思うけれど、「学級委員の女の子」風の清楚な色気があってたしかに魅力的。母親ゆずりのウィスパー・ヴォイスもすばらしい。個人的にはシャルロットの微乳ぶりと、だらしない生活を送る主人公の顔にひげが伸びてこない、という意図的な省略によって、映像のうえでも「子供の遊戯」的な一線をぎりぎり越えずにすんでいるような気がした。
■まあ、映画として特におすすめはしませんけど。(★★★)


9/2 【復活】
■フットボール・ニュースの352が再開してくれた模様。ものぐさの僕にはとても嬉しいです。