中二階日誌: 2005年1月上旬

2005-01-01

○この日記の方針

明けましておめでとうございます。

最近、日付ごとではなくトピックごとに記事が生成される方式のほうがやはり見やすいのではないかと思うようになって(検索結果がわかりやすいので)、実は昨年の末あたりからblosxomを導入しようかと試行錯誤しています。Movable Typeとは違ってローカルで作ったテキストファイルをそのまま転送すればいいので、こちらのほうが個人的には使いやすそう。

ただ、いまのところ導入してみたら文字コードの設定などにうまくいかないところがあって、まだきちんと使える状態にはなっていません。もしそのあたりが解決できたら、このURLは変えずに入れ替えようかとも考えています。

□ロス・マクドナルドに聞いてみろ

※以下の文章は『生首に聞いてみろ』と『さむけ』の結末に言及しているかもしれないので、未読の方は注意してください。

「たそがれSpringPoint」の『生首に聞いてみろ』評は、作品内のある場面での叙述上の工夫を丁寧に解説していて面白く読んだ。

ここで指摘されている人物の呼称に関する仕掛けは、法月綸太郎自身の書いたロス・マクドナルド論「複雑な殺人芸術」(ユリイカ増刊号『ジェイムズ・エルロイ ノワールの世界』収録)で、特に『さむけ』について論じられたものと似ている。エルロイ特集の本だったのでパズラー好きの人にはあまり読まれていないのではないかと想像するけれど、この評論はロス・マクドナルドを叙述のフェアプレイ(虚偽の記述を書かないこと)にこだわったパズラー作家として論じなおしていて興味深かった。「複雑な殺人芸術」が「理論篇」で、『生首に聞いてみろ』は対応する「実践篇」になっているようにも読める。もちろん、法月綸太郎はロス・マクドナルドの手法をそのまま流用しているのではなくて、もうひとつひねりを入れた使い方をしている。

この叙述上の仕掛けは、女性が社会的にその本来の名前で呼ばれないことがある、という事情をもとに成立している。思えば、法月綸太郎の評論のなかでも知られていると思われるクイーンの『九尾の猫』論も、固有名を奪われた女性に注目したものだった。『生首に聞いてみろ』ではそれに通じる題材が、首(=固有名)を奪われた彫像、彫像の型として体を提供する女性、妊娠の器として利用される女体、というように重なり合って描かれていたのがひとつ面白いところだった。

□「キマイラの城」はどこから来たか

殊能将之氏のreading diary(12月9日)によると、

『キマイラの新しい城』の献辞にある「ふたりのマイクル」とは、マイクル・イネスとマイクル・ムアコックのことです。理由は発想源がThe Daffodil Affairだから(ロンドンの幽霊屋敷が盗まれて南米に再建される話)。

とのこと。ルネ・クレール監督の映画『幽霊西へ行く』(スコットランドの古城がアメリカへ運ばれる。原作は『パンチ』に掲載された短篇小説らしい)の設定と似通っていると思っていたのだけれど、そうすると年代的にイネスが『幽霊西へ行く』を元にして書いたのかもしれない。「イネスのように書きたい」と思って『キマイラの新しい城』みたいな楽しい作品ができるのなら、『ストップ・プレス』が訳されるのも楽しみにして良さそうだ。

2005-01-03

◆『悪魔の発明』

Vynalez Zkazy (1959) / 監督: カレル・ゼマン

シアター・イメージ・フォーラムのカレル・ゼマン特集上映にて。

ジュール・ヴェルヌ原作のレトロ・フューチャーなアニメ世界を背景に、実写の俳優が混ざり合って動く。半世紀後にこれをやったのが『スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー』だった、というわけなんでしょうね。

画面を見ているぶんには凝っていて面白いけれど、お話に起伏がないのでちょっと眠くなる。いまさらながら、ヨーロッパのアニメ映画を鑑賞する素養に欠けているような気がしてきた。

途中から出てくるヒロインが可愛い。博士の発明を悪用しようとする組織からヒロインを救出するボーイ・ミーツ・ガールもの、という筋書きは宮崎駿の『コナン』『ラピュタ』路線に似ていると思ったら、やはり宮崎駿は『悪魔の発明』を褒めているそうだ。

◆『みんなのうた』

A Mighty Wind (2003) / 監督: クリストファー・ゲスト

前作『ドッグ・ショウ!』と同じく、架空のショーの内幕を擬似ドキュメンタリー手法で描いていく映画で、こちらもよくできていた。今度の題材は「1960年代のフォーク・ブームを懐かしむコンサート」と、また微妙なところを突いている。

前半はインタビューなどを交えて架空の出来事をもっともらしく捏造していく過程がおかしいし(よく考えると他の普通の映画でも似たようなことをしているはずなのだけれど)、登場人物たちの怪しい言動が突っ込まれないまま次々とスルーされていくのがコメディとして変わった感じで面白い。そして後半になってショーが始まると、それまで「ネタ」のように語られていた出来事がちゃんと感動的な文脈におさまっていく。『ドッグ・ショウ!』もそうだったけれど、このあたりのバランスの取り方が巧い。見ても何も得られるものはないといっていいけれど、気楽に愉しめて良い映画だった。

2005-01-06

□芥川賞・直木賞候補作

毎日新聞の記事がやけに候補者の年齢に注目していて面白い。芥川賞で仮に「阿部・田口ダブル受賞」とか言われたらどうすればいいんだろう。

2005-01-10

○移転のお知らせ

blosxomの導入が何とかできたので、以降はこちらで更新します。最新日記RSSファイルのURLが変わります。

本当はこのままURLを変えずに上書きして運用したかったのですが、URLを書き替えたりの小細工を入れているせいかうまく導入できなかったので、別の場所に構築することにしました。


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