2005-01-19

『博士の愛した数式』 小川洋子

bk1: 博士の愛した数式

新潮社 / ISBN:4-10-401303-X [amazon]

言うまでもなく大評判になった本ですが、いまさら読む。Amazonを見たらすごい数のカスタマーレビューが付いていて驚いた。(本日時点で153件)

話の骨組みは『沈黙博物館』とそう変わらない。主人公は現実離れした人物に雇われて、仕事をしながら何かを教えられていく。登場人物にはやはり名前が与えられず(母親が息子を呼ぶときも作中の綽名「ルート」を使うという徹底ぶり)、題名からして過去形の淡々とした語り口で、繰り返し失われていく「博士」の生の記憶と、数式の永遠の美しさが対比される。

この配置はたしかによくできているのだけれど、数学に関する「知識」の面白さに寄りかかった話なのが個人的にはいくぶん物足りなく感じるのと、先に書かれた北川歩実の『透明な一日』(1999年)と「記憶障害の元研究者」という設定が似通っているのが気になった(別に他意はなく、自分にとって題材の目新しさが薄れたということで)。『沈黙博物館』のゴシック的な不気味さのほうが好きではあった。その自閉的な感じがなくて、息子ルートの成長を配置して「開かれた」印象を与える作品になっているので、こちらのほうが一般受けするのは頷けるけれど。(誕生日を祝おうとしてトラブルが起こる場面などは、映画『ギルバート・グレイプ』みたいだ)

2005-01-19 22:52 [book] | Permanent link | Comments (0)

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