2005-01-16

『文学の徴候』 斎藤環

bk1: 文学の徴候文藝春秋 / ISBN:4-16-366450-5 [amazon]

舞城王太郎・佐藤友哉など最近の作家から大江健三郎・石原慎太郎などの大家まで、文学作品にあらわれる「精神病理」的な事象を読み解いていく評論集。読みづらい本だった。まず作者はその作家に関する先行の批評に言及しながら論を進めていくのだけれど、その部分が長い上にほとんど読者がその言及先を把握している前提で書かれているので、文脈を拾いにくい。『文學界』連載時ならこれでも通じたのかもしれないけれど、単独の著書として出すのならもっと整理してくれてもいいのではないかと思う。

また、それぞれの作家に精神医学の用語を当てはめていくのはいいけれど、それが個別の作品を面白く読める切り口になっているようには思えない。思うに、精神医学というのは症例をある程度パターンに分類していくものだろうから、その作品固有の面白さを見出すこととは相反することになるんじゃないだろうか。

ただ、各作家論を見ていくと面白い指摘も結構あって、個人的には小川洋子論(村上春樹との比較)と笙野頼子論(徹底したひきこもりが可能なのは男性より女性ではないかという仮説)、あと島田雅彦論(「島田は細心の注意を払って、〈下手な小説〉を書き続ける」(p.167))なんかは興味深く読めた。でも全体としてはあまりコストパフォーマンスが良いとはいえないと思う。

滝本竜彦・佐藤友哉の章で風野春樹さんの名前が出てきてちょっと驚いた(p.27)。ひきこもり系作家の旗手として滝本竜彦の存在を斎藤氏に教えたのだそう。

2005-01-16 20:00 [book] | Permanent link | Comments (2)

Comments / TrackBack

確か『NHKへようこそ』が出てすぐくらいの頃、どこかの学会で斎藤氏と顔を合わせたときに「滝本竜彦についてどう思いますか?」と訊いたのでした。斎藤氏が滝本氏のことを知らなかったことに、逆に驚いたものです。

Posted by kazano at 2005/01/16 (Sun) 21:42:42

なるほど。ライトノベルは他の書籍と棚とかの扱いが違うので、普段チェックしてないと情報が耳に入りにくいんでしょうね。

Posted by OK at 2005/01/16 (Sun) 22:29:13

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