2005-01-25

『ブラフマンの埋葬』 小川洋子

bk1: ブラフマンの埋葬

講談社 / ISBN:4-06-212342-8 [amazon]

どことも知れない町の〈創作者の家〉で働いている「僕」はある日、森からやってきた「ブラフマン」と出会い、飼いはじめる。

例によって登場人物にも土地にも名前が付けられず、死と喪失の予感をたたえた閉じた世界が淡々とした語り口で描かれる。町には墓石を切り出す採石場があり、墓に銘文を刻む「碑文師」が住んでいて、題名にもあるように「ブラフマン」はやがて埋葬されるはずだ。

森の獣であるらしいこの「ブラフマン」がどんな動物なのかはっきりわからないまま進むのが特徴で(栗鼠の類のようにも思えるけれど、裏付けはない)、語り手がわざわざ観察記録のような記述を挟み込むにもかかわらず、その実体は一向に像を結ばない。ブラフマンは主人公の思い出のなかにのみ生きていて、我々にはその姿が見えない存在なのだ。ペットの思い出を語る話にもかかわらず、まったく感傷が入り込んでこないのはそのあたりのねじれた感じがあるからだと思う。

正体不明の動物を何事もなかったかのように描写していく語り口や、「僕」の受け答えの遣り取りなどが、いかにも村上春樹風に作っているようで今回はちょっと気になってしまった。まあ、小品としては面白いと思います。

2005-01-25 08:27 [book] | Permanent link | Comments (0)

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