2005-05-19

『レディバード・レディバード』

Ladybird Ladybird / 1994年 / 英国 / 監督: ケン・ローチ

『誰も知らない』を見たらケン・ローチの映画を見たくなったので、ビデオを借りてきた。この日本版ビデオの発売元はシネカノンで、『誰も知らない』の配給会社もシネカノン。一貫している。どちらの作品にも共通する問題提起が、DQNな母親は子供を育てられるのだろうか?ということだったりする。

子供を産んでも産んでも官憲に取り上げられてしまう母親の話で、このジョージ・オーウェル的な状況がリアルに現出してしまうというだけでも驚く(実話に基づいているらしい)。やっぱり英国の人は行政組織の不気味さを切り取るのが巧い。犯罪者が更正できるとしたら、母親失格の烙印を押された人はどうすれば母親としての権利を回復できるのだろうか?

ただしこの映画は単に社会制度を糾弾するという図式には陥っていなくて、主人公の落ち着きのない言動、見境なく切れまくる様子はいっそ不快でさえある。これだけ気に障る人物を終始見せられながら、最後までこの主人公を心底嫌いになることはできない。[★★★★]

2005-05-19 23:19 [movie] | Permanent link | Comments (18)

2005-05-17

『ブルー・レクイエム』

Le Convoyeur / 2004年 / フランス / 監督: ニコラ・ブクリエフ

毎日大金を運びながら自分の将来の展望は暗く、運が悪ければ強盗に襲われる危険に晒されて命の保証もない、さらに不景気で会社が潰れて職を失いそう……という現金輸送車の警備員の日々をひたすら陰鬱に描いたフランスのスリラー映画。主役の親父が無口で、映画全体も必要最小限のことしか説明しない、というストイックな語り口が貫かれていて、なかなかの秀作だった。緑がかった薄暗い画面も内容の救いのなさに良く合っている。

強盗団が繰り返し同じ警備会社の現金輸送車を襲撃するに違いない、という無理めの前提に映画全体の筋書きが乗っかっているのと(一応作中で説明がついてはいるけれど)、フラッシュバックの入れ方が安易に感じられたのが多少気になるものの、作品全体の印象は悪くない。

冒頭にミュージシャンをめぐる軽口の会話が出てきて、現金強奪事件の後始末として内通者探しが進められる、という点はタランティーノの『レザボア・ドッグス』と共通するけれど、こちらはいわばプロレタリア的な視点から犯罪を描いたスリラー映画で、内容も暴力の描き方もまったく異なる。

監督・脚本のニコラ・ブクリエフはマチュー・カソヴィッツ監督の『アサシンズ』の脚本に参加していた人らしい。『アサシンズ』は未見だけれど、この作品の下層生活者の視点から社会を切り取って救いのない出来事を描くという指向は、カソヴィッツの『憎しみ』と通じなくもない。

シブヤ・シネマ・ソサエティで鑑賞。たまたま公開初日に見に行ったにもかかわらず、客席はまばらだった。[★★★★]

2005-05-17 21:43 [movie] | Permanent link | Comments (0)

2005-05-16

『誰も知らない』

amazon: 誰も知らない

2004年 / 日本 / 監督: 是枝裕和

CSで放送されていたのをいまさら見たのだけれど、これは素晴らしかった。

「誰も知らない」……と言われると、「小さな国」と続けたくなる。秩序をもたらす大人のいなくなった世界で子供はどのように生きていくだろうか、という問題は『二年間の休暇』(『十五少年漂流記』)や『蝿の王』をはじめとした物語で古くから探求されてきたものだけれど、東京の片隅を舞台にしてそれをとことんリアルに再現するとこうなるのかと思う。それが全然嘘臭くならずに再現できてしまうのが驚き。東京のありふれた街並みが、「誰も知らない」子供たちの目線でサバイバルの場所として切り取られる。見慣れた世界を別の視点から見直していく、というのは映画の面白さのひとつだと改めて実感できる。主人公の少年はそのうち、文明社会から外れたハックルベリ・フィンのようにも見えてくる。

大人の支配が届かない子供だけの世界は、子供たちからするとただ悲惨なだけではなくモラルが消失した一種の「楽園」でもあるはずで(イアン・マキューアンの『セメント・ガーデン』ではそのあたりの感じが描かれていた)、この映画もその点を等分に目配りして描いている。そこに限らず、この映画では登場人物の行動を一切裁かないであるがままに見守る、という態度が徹底されている。

ちなみにこの映画がモデルにしたという巣鴨の子供置き去り事件は、「MURDER IN THE FAMILY」の紹介記事を読むかぎりではどちらかというと『蝿の王』に近い陰惨な世界だったようで……現実は厳しい。これを知らないで映画を見て良かった気がする。[★★★★★]

2005-05-16 22:40 [movie] | Permanent link | Comments (0)

2005-05-12

『タイトロープ』の底知れぬ闇

『タイトロープ』のアリソン・イーストウッドがソンドラ・ロックに似ているのではないかという話は、探してみたら渡辺祥子と宇田川幸洋の対談「私たちが敬愛するクリント・イーストウッド!」でも話題に出ていた。

渡辺 宇田川さん、『タイトロープ』('84)を入れてよ! あの変態映画(笑)。

宇田川 あれはアブナイ(!?)映画ですよねぇ(笑)。製作と出演だけで、監督はしてないけど、彼のヘンな趣味がすごく出ている映画。シビれました。好きですよ。

渡辺 だって、娘のアリソン・イーストウッドが子役として出てるんだけど、あれを見ると誰だって自分の子供を偏愛してるアブナイ親だと思うわよね(笑)。あの娘、彼の恋人だったソンドラ・ロックにそっくり!

やっぱり誰でもそう思うのか。まあ、女の趣味が一貫しているということなんだろうね……。

デビュー作『愛すれど心さびしく』(というか『心は孤独な狩人』)のソンドラ・ロックはまだ女性として目覚める前のような中性的な魅力があるのだけれど、『タイトロープ』のアリソン・イーストウッドにも年齢(12歳)からしてそれに通じる感じがある。同じく南部を舞台にした映画でもあるし、『タイトロープ』は深い映画だなあ。

という下世話な点を除いても、『タイトロープ』は全編が闇に覆われた「暗闇のスリラー」という感じの良作だったのでお薦めできる。たしかイーストウッドの新作『ミリオンダラー・ベイビー』も、予告を見るかぎりでは似たような陰影の濃い映像で撮られていた。

2005-05-12 23:07 [topic] | Permanent link | Comments (1)

カンヌ映画祭開幕

日本時間では本日から開幕。第58回カンヌ国際映画祭 - FLiXムービーサイトでコンペティション部門の上映作の一覧を眺めると、常連監督の新作が並んで、あと賑やかし(?)の活劇がいくつか入っているなか、我らの『バッシング』が異彩を放っているような……。

アトム・エゴヤンの新作"Where the Truth Lies"は何となくミステリ風なので期待してみるか。

【追記】上のサイトはだいぶ抜けがあるみたいなので、Cannes 2005 Feature Films In Competition(公式)とか見てから読む?映画の原作の記事のほうが良いかも。

2005-05-12 21:26 [topic] | Permanent link | Comments (0)

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