2005-08-02

先月観た映画、その他

しばらく更新しないでいたら日誌じゃなくて月誌みたいになってしまった。先月観た新作映画の感想を書いてみる。移転の準備はまたいずれ……。

■『輝ける青春』(監督: マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ)

合計6時間を超える大長編。まあ、立派な大河ドラマではあるけれど、やっぱりこれだけ長いと映画のテーマがひとつに絞られないので、正直なところ劇場でじっと見るには少々きつかった。物語の始まる1966年の時点から、イタリア社会の不正に対して登場人物がそれぞれどんな道を選んでいくか……を見せていく前半部が面白くて、後半は社会との関わりが後退して、子供たちが育ってファミリーが継承されていく、という家庭内の満足に収束してしまうのが物足りない(子孫を残すこと=「幸せ」というのが絶対視されるので窮屈に感じられる)。イタリアの学生運動世代の人が自分たちの時代を振り返って満足げな思い出話をしている、という枠組みを超えるものではなかった。[★★★]

■『ライフ・イズ・ミラクル』(監督: エミール・クストリッツァ)

待望のクストリッツァ新作だけれど、この人の映画は外すと思いつきのようなメロドラマを散漫に連ねているだけに見えてしまうんだよね(『アリゾナ・ドリーム』とか)……というパターンに陥っていていまひとつ物足りない。残念ながら今回は『アンダーグラウンド』の破天荒さや『黒猫・白猫』の歓喜はなかった。あと、この映画の筋書きは「電車男」が戦時中にたまたま人質として押し付けられた運命のヒロインと結ばれるというものだけれど、それって「ストックホルム症候群」みたいなものじゃないの?[★★★]

■『運命じゃない人』(監督: 内田けんじ)

ある一晩に起きた出来事をそれぞれ別の人物の視点から語り直していく……というポスト『パルプ・フィクション』的な趣向は珍しくないものの、脚本が見事にまとまっていて堪能できた。きっとタイムテーブルを作って脚本を組み上げたんだろうなあ。パズル好きは必見。同じ場面の繰り返しがそれぞれ物語の意味の読み替えになっているし、作中の台詞がどこまで本気なのか裏付けられない構造になっているのも巧い。ビリー・ワイルダーの『アパートの鍵貸します』の本歌取りがあるのも、脚本に賭ける心意気を感じる(主人公はあの映画のジャック・レモンに似たお人好しだ)。ただ、いかんせん話が小粒すぎるような気もするけれど。[★★★★]

■『チーム★アメリカ/ワールドポリス』(監督: トレイ・パーカー)

素晴らしかった! 見境のない悪ふざけに当てられて、観た後は確実に頭が悪くなったような気がした。アメリカ帝国主義もリベラル俳優も金正日も、あらゆる権威といんちきな存在がこけにされているけれど(金正日はむしろ可愛らしいか?)、全体がブラッカイマー映画の手法を忠実になぞったパロディになっていて、ちゃんと背景に安っぽい音楽が流れるのが笑える。特にその手の映画にありがちな編集術そのものを茶化してみせる"Montage"の歌には吹き出しそうになった。時事ネタ満載なので、後世の人が観るとさっぱり意味がわからなかったりしそうなのが難か。[★★★★★]

■『アイランド』(監督: マイケル・ベイ)

その『チーム・アメリカ』で「奴がどうして映画を撮りつづけられるのか」と酷評されていたマイケル・ベイ監督の新作。『ガタカ』的なレトロSFにマイケル・ベイの大味アクションをぶち込むというよくわからない企画で、新味はないにしても、「MSN Searchを導入した電話ボックス」とか、たまに凝った小道具や場面が出てきて暇つぶしにはなる。スカーレット・ヨハンソンはあまり綺麗に撮られていなくて冴えない。しかし、ユアン・マクレガーとスティーヴ・ブシェミが便所で揉み合っているところをゲイの痴話喧嘩と勘違いされる、というギャグには「これは本当に21世紀の映画なのか……」と気が遠くなった。[★★★]

■『亡国のイージス』(監督: 阪本順治)

『ローレライ』があまりに酷かったせいか、相対的にこれは結構悪くないのではと思えてしまった。映画らしい大胆な「省略」に頭を使わせる箇所がいくつもあるし、登場人物も細かい仕草にそれぞれ存在感がある。ただ、福井晴敏原作の映画はどちらも筋書きが『沈黙の艦隊』と『パトレイバー2』の焼き直しにしか見えないのが気になるし(実際、原作に「弾頭は通常にあらず!」という『沈黙の艦隊』そのままの決め台詞が出てくるのを知って読むのをやめたことがある)、軍事もの映画の演出が決まって重厚な音楽を流して愛国心や自己犠牲を盛り上げようとするパターンになってしまうのはどうにかならないものかと思う。[★★★]

2005-08-02 22:49 [topic] | Permanent link | Comments (0)

2005-07-09

blosxomの動作不良と『輝ける青春』

Xreaのレンタルスペースの広告免除が期限切れになったのだけど、そうしたら途端にblosxomがうまく動いてくれなくなってしまった。いまのところ、

  • トップページを一度リロードしないと見られない。(Operaでのみ確認)
  • 個別記事のリンク(permanent link)を開けない。
  • 次のページ(過去の記事)を開けない。

という現象を確認している。要するにトップページ以外は表示されないわけで、ほとんど壊滅的だ。動的生成方式のブログツールはこういうときに困るね。

広告免除を継続するか、たぶん調べれば何か解決策があるのだろうけど、このスペースはしばらく前からいわゆるGoogle八分に遭っていてそれが改善される見込みもなさそうなので、いずれ場所を変えたほうがいいだろうとは考えていた。Googleで検索されないウェブサイトは存在しないも同然だから……。その必要な時期が早まったということで、まあ仕方ないかな。というわけで、近日中に別の場所を取っておくつもりです。

話変わって、今日(7月9日)公開された映画は多いのだけれど、個人的に注目しているのがイタリアの大長編映画『輝ける青春』。合計6時間!1日1回だけ上映!(途中休憩あり)という観客の体力に挑戦するような破格の上映形態もさることながら、海外での評判も相当に良いみたいなので(例えばMetacriticの採点では平均90点)、期待している。この映画についてはこちらの記事が参考になる。(日本の公式サイトには後半の展開を割った記述があるので注意、とのこと)

2005-07-09 23:33 [topic] | Permanent link | Comments (0)

2005-07-01

『宇宙戦争』

War of the Worlds / 2005年 / 米国 / 監督: スティーヴン・スピルバーグ

スピルバーグ監督作が日米同時公開、SF映画で「天才子役」が出演する……というとどうしても『A.I.』の悪夢を思い浮かべてしまうのだけれど、今回は題材が得意分野のモンスター・パニック映画で、小市民が日常生活を破壊されてひたすら逃げ回る『激突!』系の一本道スリラーなのできちんと面白い。『シンドラーのリスト』(ホロコースト)、『プライベート・ライアン』(地上戦)と続いた戦争・大量殺戮ものの光景を米国本土に持ち込んだ作品ともいえるし(いわゆる「見ろ、人がゴミのようだ」路線というか)、『A.I.』や『マイノリティ・リポート』で気になった意味不明の過剰な陰惨さも今回は物語内容と合っている。最近のスピルバーグ作品の例に漏れず、特に後半は突貫工事のやっつけ感が見られるのは否めないのだけれど……。

異星人侵略なんて古臭い題材の映画をいまさら撮るとどうしても『マーズ・アタック!』や『サイン』のようなネタ映画になりがちなので、たまにはこういう正面突破に近い作品を見るのも悪くない。

トム・クルーズの駄目中年ぶり(子供にもしじゅう侮られる)、やたら挙動不審で空回りする言動も結構はまっている。後半から出てくるティム・ロビンスはそれに輪をかけて怪しいので、まともな大人が出てこない。

あと、日本各地で様々な憶測を呼んでいる「大阪では何機か倒したらしい」という作中の発言だけれど、単なる風説だと解釈するのはつまらないので、ここは「"たこ消しマシーン"で撃退した」説を提唱してみたい。まじめに書くと、阪神大震災から「高速道路倒壊」のイメージを借りたので、オマージュとして地名を出したんじゃないだろうか(神戸だとそのまますぎるので、USJにちなんで大阪にしたとか)。[★★★★]

2005-07-01 23:56 [movie] | Permanent link | Comments (0)

2005-06-21

『チャレンジ・キッズ 未来に架ける子どもたち』

Spellbound / 2002年 / アメリカ / 監督: ジェフリー・ブリッツ

全米スペル暗記大会(Spelling Bee)」に参加する子供たちを描いたドキュメンタリー映画。柳下毅一郎氏の日記(3月8日)で紹介されていて知ったのだけど、なるほどこれは面白い。

アメリカでスペリング大会なんてのが行われていること自体知らなかったのだけど、国内では有名な大会で、毎年の全国大会はESPNで放映されているらしい。大会の様子を見ていると、そんなの知るわけないような難解な単語や外国語由来の言葉(日本語の"zaibatsu"なんてのもあった)が次々と出題されて、もはや英語を覚えるという趣旨からは外れて奇形的に発展している印象を受ける。その一方で、学校生活では仲間外れにされやすいいわゆる"geek"な子供たちが注目を浴びてヒーローになれる企画でもある。登場する子供たちにメキシコ系やインド系など、移民出身の出自を持つ人物が多いのが印象的だった。一見奇妙な大会だけれど、移民でも誰でも、言葉という共通のルールを覚えればアメリカの一員として認められ、努力すれば成功できるかもしれない、というアメリカの側面を示した大会でもあるのがだんだん見えてくる。

それはともかく、登場する子供たちがそれぞれ漫画みたいに個性的で面白い(辞書がぼろぼろになるまで毎日勉強している少女もいる)。そのなかに何人か眼鏡娘(意外に可愛い)がいて、彼女たちがちゃんと大会で勝ち残っていくのは「さすがわかってるな」と思った。

『論座』の最新号(2005年7月号)に監督のジェフリー・ブリッツによる記事が掲載されていて、スペリング大会を取り上げることで「アメリカ」の縮図を描けるのではないかと考えた、というような意図を語っている(監督自身もアルゼンチンから来た移民の家系なのだそう)。その記事で、スペリング大会の「一発アウトで参加者の数が減っていく」という趣向には『そして誰もいなくなった』のようなスリルがある、と書いているのが面白い。(したがって、この映画には登場人物がだんだん消えていく『金田一少年』みたいな演出がある)

2005-06-21 23:27 [movie] | Permanent link | Comments (2)

2005-06-20

『バットマン ビギンズ』

Batman Begins / 2005年 / 米国 / 監督: クリストファー・ノーラン

『アメリカン・サイコ』でチェンソー殺戮、『リベリオン』で「ガン=カタ」、そして『マシニスト』で激痩せ術を身につけたクリスチャン・ベール、今回の彼が習得するのは何と「忍術」なのだった……。渡辺謙は単にこの「東洋の神秘」の顔見せのために呼ばれたみたいだ。監督のクリストファー・ノーランは隠れタランティーノ・フォロワーらしいので、『キル・ビル Vol.1』を見て「俺もタラさんに続いて『影の軍団』リスペクト映画を作ってみせる」と意気込んだのかもしれないと勝手に想像する。忍術修行の舞台は日本ではなくなぜか「ヒマラヤの奥地」(チベットあたり?)なのだけど。

という前置きはともかく、今更『バットマン』で何をやるのかと半信半疑で見に行ったら、蓋を開けてみるとリアリズム方向に舵を切ったアメコミ映画として思いのほか楽しめた。話を盛り込みすぎで上映時間が長めになってはいるけれど、クリストファー・ノーランは結構やるじゃないかと感心する。

ゴシックとファンタジーの面を強調したティム・バートン版の「どこでもない」架空の世界とは違って、この映画のゴッサム・シティは現実社会に近い設定のもとで動いていて、主人公のブルース・ウェインも超人ではなく普通人として出発する。漫画のヒーロー物語をできるだけ現実社会に即した解釈で読み替えていく感じがあって面白い。クリストファー・ノーランはもともとミステリ映画(『フォロウィング』『メメント』)で出てきた人なので、ロジカルな手続きで物語の隙間を埋めていく作風なのだろうと思う(その過程で「東洋の神秘=忍術」も援用されるわけだけれど)。主人公のバットマンは法の外で勝手に正義を実行する、観客が肩入れしにくい人物なので、その周りにヒロインの検察官(法の範囲内での「正義の実行」を代表する)や穏健派の「執事」を配して、主人公の行動を批判しないまでも相対化するようになっているのも抜かりない。

主演のクリスチャン・ベールと執事役のマイケル・ケインはどちらも英国出身の俳優で、監督のクリストファー・ノーランもロンドン生まれの英国人なのだそうだ。主人公のブルース・ウェインは街の有力者の息子、つまり作中でも言われるように「王子様」の役割で(王子なので乞食と服を交換したりもする)、マイケル・ケインはいかにも英国風の執事を演じている。ちょうどP. G. ウッドハウスの『ジーヴズの事件簿』を読んでいたせいか、これは『バットマン』の枠組みにウッドハウス的な「困ったお坊ちゃんとしっかり者の執事」という英国コメディの類型を投入した作品のようにも思えた。ちなみに、マイケル・ケインの演じる老執事はさすが白々しさとチャーミングさが絶妙で、これからは「執事」といえばこの映画のマイケル・ケインを思い出してしまいそうだ。

ついでに書くと、この主人公ブルース・ウェインは職場には親のコネで裏口入社、普段はろくに仕事もしていないようなのに体面だけ適当に繕い、夜な夜な仮面を付けて街の「浄化」に励む……と、これはよく考えるとクリスチャン・ベール自身が『アメリカン・サイコ』で演じた腐れヤッピーとそれほど変わらない。要するに、英国人がアメコミのヒーローに突っ込みを入れながら映像化するとこうなるのだろう。個人的には『バットマン』自体に特に思い入れがあるわけではないせいか、このくらいの突き放し方も面白いように感じた。

画面を見ればわかるけれど、ゴッサム・シティはニューヨーク・シティの陰画でもある。東方からテロリストがやってきてゴッサム・シティを危機に陥れるという展開は、ヒーローものにありがちな筋書きとはいえやはりある種の政治的な読みを思い浮かべないでもない。とりわけ、法の外の「復讐」は正当化されるだろうかということがひとつの主題になっているので……。[★★★★]

2005-06-20 23:57 [movie] | Permanent link | Comments (0)

Page 2/30: 1 2 3 4 5 6 7 8 9